人間禅道場

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薬病相治

 
      
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薬病相治  薬病相(やくびょうそう)()    

「薬病相治」は一般に「やくびょうそうじ」あるいは「やくへいそうち」と棒読みにしているが、「やくびょうあいちす」とよんだほうが意味がわかりやすい。ちなみに「()い治す」の「相」は「ともどもに」とか「あれもこれも、二つながら」という意味であり、したがってこの四字一句の意味は
 病気はもとより、薬による中毒の症状も、ともにみな治癒(ちゆ)し、完全な健康体に戻る。
というような意味である。
 およそ病気にかかれば、その症状をよく診断した上で「応病(おうびょう)()(やく)」で適切な薬を投与して、その病気を治すが、(げき)薬を長期にわたって投与すると、病気はなおっても、その後に薬の中毒症状いわゆる薬忌(やくき)がのこるものである。しかし、この薬忌がのこっている2間は、まだ本当に健康体に戻ったとはいえない。そこでさらに養生につとめて薬忌の除去をはかり、ついに病気も薬忌もきれいに抜き去った真の健康体に戻る。これを「薬病相治」というのである。以上は肉体の病気についていったのであるが、禅家ではこれを心の病気の治療、すなわち転迷開悟に転用して、この四字一句を大いに尊重するのである。
「薬病相治」の四字一句は「臨済録」の「示衆」の段にも出ているが、これが禅家でとくに強調されるようになったのは、「臨済録」の第八十七則に
 雲門示衆云、薬病相治、尽大地是薬、那箇是自己。
(雲門衆に示して云く、薬病相治す。(じん)大地(だいち)是れ薬、那箇(なこ)か是自己。)
という一則があり、これが公案として重んじられてからのことのようである。この一則の講釈は、今はやめて、ただこの一句の禅的な解釈だけを紹介しておくにとどめよう。
 およそ人の心の病とは、五欲の奴隷となり、その五欲の対象への執着から起こる迷いのことである。禅の修行はいろいろに定義づけられようが、畢竟(ひっきょう)するに坐禅の修行によってこの迷いを悟りに転じ、「鉄鎖」に比せられる迷いの繫縛(けばく)から脱却することである。これは投薬によって病気がなおったことにあたるもので、一応喜ぶべく結構なことではある。しかしなまじっかの修行ぐらいでは、悟れば悟ったで悟りへの執着が生じ、いやらしい悟りの臭みが、なおまつわりつくものである。この悟りの臭み、これはさきにいった「薬忌」に比すべきものである。「味噌の味噌臭きは上味噌にあらず。悟りの悟り臭きは上悟りにあらず」とよくいわれるが、悟りの臭みをきれいに抜き去らなければ本当の悟りとはいえない。迷いの「鉄鎖」に対して悟りの繫縛を「(きん)()」というが、そして金鎖は貴いものではあるがやはり心の自由なはたらきを妨げるものであることに変わりはない。迷いの鉄鎖を断ち切り、さらに悟りの金鎖をも断ち切ってこそ、本当の解脱であり、真の悟りというものである。
 芳賀幸四郎著「新版一行物―禅語の茶掛け」上巻より       人間禅
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