人間禅道場

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千里同風
        
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千里同風        千里(せんり)同風(どうふう)

 「千里同風」、これは茶掛けに揮毫される禅語の一つである。日本の風も、アメリカの風もロシアの風も別に風に変わりはなく、みな同じである、というのがその一応の意味である。地球をとりまく同じ空気が、気圧の高い所から低い所へ流れこむ物理的現象、それが風なのであるから、これは当然のことである。しかし禅者が「千里同風」といい、これを好んで揮毫するのは、単にこのような意味からだけではむろんない。

 地球上にはご承知のとおり多くの国ぐにがあり、その地形や風土もさまざまで、それに応じて同じ人間ながらも皮膚の色もちがえば、食事や言語もちがい、風俗・習慣も異なっている。しかし、よくつきあってみると、親が子を愛し、子が親を慕い、正義を貴び不正を憎むなどの根本の性情においては別に変わりはなく、みな同じである。その意味ではまさしく「千里同風」である。 それなのに、人間が人為的に画定(かくてい)した国境や、勝手に考えだしたイデオロギーの相違などに執着して、互いに対立しいがみあい、はては戦争などをくりかえしているのはなんという量見の狭さであろうか。私たちは同じ地球上に住む人間として、もっとグローバルに考え、四海同胞として仲良く暮らすべきだという反省をこめて、禅者はこの四字一句を揮毫するのである。

 なおこの四字の上に「君子」の二字を加えた「君子は千里同風」という句がある。この場合には「君子」の二字を加えただけに意味が限定され、その味わいがちがってくる。キリストは有名な「山上の垂訓」において、「汝等、衣食のことを思い(わずら)うことなかれ。野の花を見よ、空飛ぶ鳥を見よ。彼らは()かず、(つむ)がざれども、その(よそお)いはソロモンの栄華にもまされり」と説いている。ところでキリストのキの字も知らない永平道元も、弟子たちに向かって「汝等、学道の士は衣食のことを思い患うことなかれ。口あって、(くら)らわずということなく、肩有って着ずということなし」云々と訓戒を垂れている。このように君子・聖人の説くところは、その言葉や文字はちがっても、究極のところはみな同じである。根本は一つであり、「千里同風」である、という意味になる。

 「千里同風」はこの二つのどちらにとってもよく、つまるところ「渓山異なると雖も、雲月是れ同じ」という禅語や、「雨あられ雪や氷とへだつれど()くれば同じ谷川の水」という古歌の肚と似たものである。               以上

 芳賀幸四郎著「新版一行物―禅語の茶掛け 上巻より         人間禅
 
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